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zoom RSS 現代映画にみる『マハーバーラタ』の連続性と変容:発表報告1

<<   作成日時 : 2017/07/17 08:00   >>

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『マハーバーラタ』を題材とした現代映画について
研究するよう依頼をいただきました。
その成果の一部として、下記のような発表をしましたので、
レジュメを掲載いたします。
全二回の第一回目です。

「現代インド映画における『マハーバーラタ』の英雄像の継承と変遷
 ――ビーマ、アルジュナ、クリシュナを中心として」(中間報告)−1

1『Mahabharat』におけるビーマ、アルジュナ、クリシュナ
――『マハーバーラタ』の英雄像の<継承>

『Mahabharat(マハーバーラタ)』
2013年/インド/アニメ映画/ヒンディー語/125分
監督:アマーン・カーン
声優:アルジュナ:アジャイ・デーウガン
   ビーシュマ:アミターブ・バッチャン
   クリシュナ:シャトゥルガン・シンハー
   ビーマ:サニー・デーオール
   カルナ:アニル・カプール
   ドラウパディー:ヴィディヤー・バーラン
   ユディシュティラ:マノージュ・バージパーイー
   シャクニ:アヌパム・ケール
   クンティー:ディープティー・ナヴァル
   ドゥルヨーダナ:ジャッキー・シュロフ

<物語のあらすじと原典との対比>
・双子は剣に優れている
(パーンダヴァ5兄弟における双子の低い地位と、
武器としての剣の劣等性)
・筋骨たくましいビーマ
・アルジュナは最も優れた弓使い
・御前試合:ビーマとドゥルヨーダナ、アルジュナとカルナ。
ビーマとドゥルヨーダナは棍棒で戦う。最も原始的な武器。
アルジュナとカルナは弓術。華麗な魔法対決の様相を示す。
弓による天候の支配、地面から杭が出てくるなど。
(原典ではインドラが天空を雲で覆い、
太陽が側に近づいた雲を取り除いた1, 126, 23-25)

→原典におけるアルジュナの戦闘の様子
MBh 1, 125, 19-20(プーナ批判版)
アーグネーヤによって火を作り出し、
ヴァールナによって水を作り出し、
ヴァーヤヴヤによって風を作り出し、
パールジャニヤによって雲を作り出した。
バウナによって大地に入り、
パールヴァタによって山を作り出し、
アンタルダーナによってそれらの武器を再び消滅させた。

・<肉体的力>(ビーマ)と<魔法>(アルジュナ)の対比

・燃えやすい家の火災
・ラークシャサのヒディンバ退治 
素手でヒディンバを倒すビーマ
・ヒディンバーとの結婚
花輪を交換するビーマとヒディンバー
・ドラウパディーのスヴァヤンヴァラ
カルナを拒むドラウパディー
バラモンの姿のアルジュナ
一妻多夫婚 
ドラウパディーの前世におけるシヴァの恩寵としてクリシュナが説明
・カーンダヴァプラスタ(インドラプラスタ)
アルジュナの祈りに応えてインドラが現れ、
ヴィシュヴァカルマンがパーンダヴァのために
荒れ地に都と城を作る。(ここは映画のオリジナル。)

原典ではどのように都を作ったか、描写が分かりにくいが、
「測量した」という表現が見られることに着目したい
MBh 1, 199, 28
神聖で吉祥なるその地で地鎮祭を行ってから、
ドゥヴァイパーヤナに導かれた英雄たちは
町を測量させた(作らしめた)。

『リグ・ヴェーダ』において、測量は宇宙創造の手段である。
→RV 5, 85, 5
ヴァルナの偉大な霊力を、わたしは告げる。
かれは、縄索をもってするかのごとく、太陽をもって、
大地を測量した(=作り出した)。(括弧内ママ)
(中村元『ヴェーダの思想』中村元選集第8巻、
春秋社、1989年、336頁。)

なお、原典ではアスラのマヤがパーンダヴァの集会所を作る。
この箇所が映画に反映されている可能性あり。

・スバドラーとアルジュナの結婚 アビマニユの誕生
・ドラウパディーがドゥルヨーダナを辱める
(原典にはないが、原典の意図を汲み取っている)
→この事件が骰子賭博につながる
・骰子賭博 ドラウパディーの衣
・パーンダヴァの追放
・ハヌマーンとビーマ
・シヴァとアルジュナ
(ビーマ、アルジュナの通過儀礼)→参考@
・ヴィラータ王宮での正体を隠した滞在
・13年後、クリシュナの使節
クリシュナの神の姿の顕現 身長が高い 
ギリシャの神の表現と同じ

・戦争
アルジュナの迷い
バガヴァッド・ギーター
クリシュナの神としての姿の顕現
クリシュナのトリック
シカンディン
矢の床に横たわるビーシュマ(アルジュナによる)
アビマニユの死
クンティーとカルナの密談
カルナの死(アルジュナによる)
シャクニの死
ドゥフシャーサナの死(ビーマによる)
水中に隠れるドゥルヨーダナ
ドゥルヨーダナの死(ビーマによる)

・ユディシュティラの即位

●全体を通して、ユディシュティラの王としての重要性は
弱められており、最後の場面がほぼ唯一の見せ場と思われる。
戦士としてのビーマとアルジュナの重要性が見て取れる。


●パーンダヴァ五兄弟と三機能体系説
スウェーデンのインド・イラン学者ウィカンデル(S. Wikander)は、
デュメジルの三機能体系説に基づいてパーンダヴァの
それぞれの性格を分析し、
徳高い聖王であるユディシュティラは第一機能(聖性・王権・法)を、
戦士であるビーマとアルジュナは第二機能(戦闘)を、
美しさを最大の特徴とする双子のナクラとサハデーヴァは
第三機能(生産性)を、
それぞれ管掌していると考えた。
さらに戦士の二人に関して、
一方のビーマが野生的で暴力的な格闘家であるのに対し、
他方のアルジュナは文明的で秩序に従順な、
理想的な戦士であるという、好対照をなしていると分析した。

ウィカンデル及びデュメジルの研究をまとめると、
五兄弟と戦闘とのかかわり方は以下の通り。

ユディシュティラ――戦において活躍しない。<聖王>
ビーマ――棍棒で戦う「野性的格闘家」――<ヘラクレス型>
アルジュナ――弓に優れた「文明的戦士」――<アキレウス型>
双子――剣を得意とする。(『マハーバーラタ』における剣の劣位)

映画「Mahabharat」においては、
これらの特徴がすべて反映されており、
比較神話学者によって再建されたインド・ヨーロッパ語族の
戦士の原像が現代に継承されていることが確認できる。

特にアルジュナの弓の「魔法的表現」
(空中に魔法陣のようなものが浮かぶ)は、
原典における弓の魔術的側面を継承し、
新たな形で表現しているものと考えられる。

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